e-Learning

情報処理 Vol.49 No.9 Sep.2008 が届いた。特集は「eラーニングの広がりと連携」。分野的には興味があったので、さっそく読んでみた。といっても、MITの宮川氏が執筆した「オープン・コース・ウェアの現状と展望」しかまだ読んでいません。

オープン・コース・ウェアはOCWと略して言うようです。MITのOCWは確かにニュースとなっていて、2003年9月8日にチェックしていました(MIT Open Course)。最初はビジネスとして成立するのかを検討されていたようなのですが、こういったものは無償で公開するのが教育機関としては当たり前の気がしていたので、意外でした。とはいえ、MITが無償で教材を公開することになったときに、外で見ていたものとしては、随分思い切ったことをした、と感じた覚えがあります。教材は、教員にとっては財産ですから、2年前ぐらいの内容であれば公開してもいいのですが、最新のものまでは出しにくいという側面があるからです。フィードバックがあれば、意味があると思いますが、記事を読む限りでは、教員のモチベーションが高まるような利益があったのかどうかは微妙な気がしました。とはいえ、ほとんどのコースについて教材が公開されたということをみると、何か教員にとって良い点があったのではないかと思います。

さて、もうひとつ個人的に興味を持ったのは、著作権周りです。引用とか、教員の著作権はどうなるのか、といった点は結構難しい問題です。これに対して、MITがとった方法は、さすがだと思いますが、当たり前といえば当たり前の、地道な作業をしたというだけという感じもあります。要は弁護士を雇って、専門的に検討をして対策をとったり、著作権を持っているところへ問い合わせをして許可をとった、ということなのですが、こういった当たり前の作業は、手間がかかるので、実際にはなかなかできないものです。

ただ、クリエイティブコモンズライセンスが提唱された時期と重なったらしいので、そういうライセンスを利用できる環境であったのは良かったのかもしれません。オンラインのドキュメントは、他のサイトから引用されてもいいという前提で書かれているものが多いと思うのですが、それを明示的に示すクリエイティブコモンズライセンスは非常に役に立ちます。ただ、書籍などのようにオンラインではないドキュメント分については、個別対応が必要そうなので、そこをクリアするのは結構大変なことだったのだと思います。それでもクリエイティブコモンズライセンスのようなライセンスが世の中で認知されていたことが、オフラインの世界へも影響を与えていて、書籍の著作権を持っている人が比較的寛容に許可をしてくれたのではないか、と推測してしまいます。

ここで、似たようなものでリンク許可というのがあるのを思い出した。今だに議論はわかれるところですが、検索エンジンがこれだけ普及して、その存在が認められた今となっては、わざわざリンクをさせてくれと許可を願い出る必要はないと個人的には考えています(リンク切れが発生しないようにチェックするのが大変そうですが)。

話を戻しましょう。e-Learningは日本での普及率は高くないようですが、MITが行ったレベルのことを実施できる力は日本の大学にもあると思いますので、関係者の皆さんには是非頑張って、MITのOCWを越えるものを作ってもらいたいところです。OCWだけでは駄目で、e-Learningも普及させるためには他にもいろいろ必要でしょうが、とにかく田舎にいても高度な研究ができるような環境を作ってもらいたいと強く思う次第です。他力本願な締めくくりで申し訳ないけど 🙂

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